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「データセンター銀座」、電力需給にひずみ 火力で帳尻

NIKKEI GX 2025年2月3日

データセンター電力爆食の震度㊤

クラウドや人工知能(AI)の普及が世界の電力システムを揺らしている。データセンター(DC)や半導体工場の新設が各地で進み、局地的に電力需要が急増しているためだ。日本の電力需要は減少傾向が続いていたが、2023年度を底に増加に転じ、34年度までの10年間に6.2%増える見通し。火力発電で電力需給のギャップを埋め合わせる動きもあり、脱炭素に逆行する懸念がある。

データセンターの急増が電力システムや脱炭素の動きに与える影響を、3回の連載で分析します。次回は4日に掲載します。

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ワシントン郊外に世界最大の集積地

米ワシントンDCから北西に車で1時間ほど離れたバージニア州北部。窓のない巨大なコンテナのような白い建物が団地のように並んだ場所がある。首都から近いため、もともと政府系のDCが点在していた。10年代に州政府がDC向けの税制優遇を発表して以降、GAFAなどの巨大IT(情報技術)企業が拠点を開発している。

「州内の電力需要は第2次世界大戦以降、最も高いレベルで伸びている」。米電力大手ドミニオン・エナジー・バージニアのエドワード・ベイン社長は地元紙の取材に対し、こう明かした。現在バージニア州北部のDCは容量ベースで合計414万キロワットと、東京近郊のDCの約4倍に相当し、世界最大だ。州政府の試算によると必要な電源は40年までにさらに最大5000万キロワット超増える見通しで、うち半分をDC向けが占める。

DC開発を制限する国も

同じようにDCが集積する「データセンター銀座」が世界各地に出現している。クラウドサービスは通信速度が品質を左右するため、インターネット接続事業者同士の接続拠点や産業都市・大都市の周辺がDCの適地とされる。DCが建設されると送電網などのインフラも増強され、他社もDCをつくりやすくなり、DCがDCを呼ぶ状態になりやすい。

国際エネルギー機関(IEA)によると、DCは世界の消費電力全体の約1%にとどまる。ただ米国の一部の州では消費電力の10%を超えた。アイルランドでは20%以上を占め、28年までは新規建設を制限する方針を掲げている。シンガポールや台湾でも同様の動きがある。また中長期では世界の電力需要を大きく押し上げる可能性がある。

送電網の整備には一般的に5〜10年かかる。そこで現実解として米国で新設が進むのがガス火力だ。ドミニオン・エナジーは39年までに州内に590万キロワット分の火力発電を建設する方針を示す。DCは24時間稼働する一方、太陽光や風力は天候によって発電量が変わる。再生可能エネルギーの変動を穴埋めするためにも火力の新規開発が必要だと判断した。

米石油大手シェブロンは1月28日、米GEベルノバなどと提携し、米家庭300万〜350万世帯分に相当する最大400万キロワットのガス火力を新設すると発表した。DCの隣接地に発電所をつくり、通常の送電網を使わずに電力を供給する考え。二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)を組み合わせ、27年末までに電力供給を目指す。

ガスタービン受注、過去最高水準

電力需要の拡大に対応するため火力に回帰する動きは世界的なトレンドになりつつある。三菱重工業でガスタービンを手掛けるGTCC事業の受注高は北米などで受注が増え、24年3月期に1兆2593億円と過去最高を更新し、足元でも好調が続く。競合の独シーメンスも24年9月時点の受注残が過去最高水準となった。JERAの奥田久栄社長は「世界はガス火力の一大ブームとなっており、納期の長期化や価格の急騰が進んでいる」と指摘する。

これまで脱炭素で先行してきた欧州もガス火力の新設支援に舵(かじ)をきった。ドイツは25年にもガス火力を新設するための入札を始め、1000万キロワット規模の発電能力を確保する。落札事業者には30年代から燃料をガスから水素に切り替えるよう求める。英国も水素混焼など脱炭素対策を講じたガス火力を対象に、新設を後押しする方針だ。

DCの拡大で巨大IT企業も脱炭素目標の達成が遅れている。マイクロソフトは30年までに温暖化ガスの排出量を削減量が上回る「カーボンネガティブ」の実現を掲げているが、23年の排出量は20年比で4割増えた。米グーグルの排出量も同期間で4割増加した。

30年度までに1500万kWの需要

日本の状況はさらに厳しい。全国の電力の需給状況を監視する電力広域的運営推進機関(OCCTO)は1月、34年度の電力需要が8943億キロワット時と24年度見通しから6.2%増える想定を示した。すでに千葉県印西市や大阪府茨木市などではDCの集積が進んでおり、政府は30年度までに産業向けで1500万キロワット分の新規需要が見込まれるとしている。

ただ日本の電源構成に占める火力の比率は7割と先進国の中で高く、新設のハードルは高い。国土の狭い日本では大規模太陽光発電所や陸上風力の開発余地が減っている。

脱炭素との両立に向け、カギを握るのはDCの省エネ技術だ。DCはサーバーを冷やすための空調機器が消費電力全体の3分の1を占めるとされ、液体を使ってサーバーを冷やす方法などが研究されている。北海道のDCでは冬に外気を使って、サーバーを冷やす方法なども導入が進む。

東京電力パワーグリッドは日立製作所と共同で、電力の需給に合わせて複数のデータセンターを一括で制御する技術の実証を始めた。再生エネが余っている場所のDCで優先的に計算したり空調を制御したりして、電力需給のバランスをとる。日本では事業者を対象にDCの省エネ目標を定めているが、ドイツではさらに踏み込み、26年以降に新規開発するDCには厳しい省エネ基準を満たすことを義務づける。

もっとも中国のDeepSeek(ディープシーク)が開発した生成AIモデルは電力消費が少ないと言われている。1月末に世界の株式市場を揺らした「ディープシークショック」では半導体関連株とともに、米電力大手のコンステレーション・エナジーや三菱重工、日立などの株価も急落した。技術開発の動向次第では電力需要が大きく変わる可能性もありそうだ。

(泉洸希)

 
 
 

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