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【25年展望】エネ基案、投資判断難しく 国際大・橘川氏

NIKKEI GX 2025年1月7日

政府が2024年度中の閣議決定を目指す次期エネルギー基本計画案では40年度の再生可能エネルギー比率を4〜5割程度、火力は3〜4割程度、原子力は2割程度とした。国際大学の橘川武郎学長は「電源構成に幅を持たせたことで、企業にとって投資判断に使いにくいものになった」と語る。再生エネでは太陽光発電に伸びしろがあると指摘する。主なやり取りは以下の通り。

GXに関連する主な分野の2025年の展望を専門家に聞きました。ラインアップは以下の通りです。

  • トランプ再登板、重み増す適応 BCG丹羽氏

  • ・エネルギー基本計画/国際大・橘川学長〜7日公開

  • ・洋上風力発電/三菱総研・寺沢氏〜8日公開

  • ・サステナ情報開示/EY喜多氏〜14日公開

  • ・排出量取引/京都大・諸富教授〜15日公開

政府案では複数のシナリオに基づいて電源構成を示しました。

エネ基は中長期の一番あるべき電源構成を1つ示すことで、民間企業が電源投資の参考にする目的があった。現行のエネ基も再生エネを36〜38%とするなど幅を持たせていたが、今回のエネ基案は再生エネを4〜5割とし、電源構成の幅がこれまで以上に大きくなった。民間企業は投資戦略を考えにくくなり、基本計画が無意味になってしまうのではないかと懸念している。

火力発電は燃料ごとの内訳が初めて示されませんでした。

天然ガスや石油など化石燃料の調達への影響を特に懸念している。エネ基では化石燃料の長期契約の重要性が示されているが、最低限どれほどのボリュームが必要なのかが明確にならないと契約を決めにくい。

現行のエネ基では30年度に水素・アンモニア発電が電源構成に占める比率を1%程度にする目標があったので、各社は研究開発を進められた。次期エネ基案では水素・アンモニア発電の目標がなくなり、タービンなどを開発する重工メーカーも戦略を立てにくい。30年以降に石炭や天然ガスから脱炭素燃料への移行がどのように進むのかが不透明になった。

原発は「可能な限り依存度を低減する」という文言がなくなり、再生エネとともに最大限活用する方針を示しました。

電源構成だけでみると、原発の比率が再生エネに比べて下がってきたが、文章で再生エネに並ぶ電源だと明記されたことは大きい。エネ基を議論する有識者会議に原発推進派の需要家が多いこともあり、復権につながった。

ただ原発の電源比率を40年度に2割にする目標は達成への道が険しい。現在は14基が稼働済みで、目標達成には単純計算で30基以上を稼働させる必要がある。開発する方針を示した次世代型革新炉は新設に20年以上かかる可能性があり、40年度には間に合わない。新設の費用も数兆円にのぼるとみられ、電力会社は投資負担が少ない既設炉の運転延長に頼らざるをえない。

再生エネを4〜5割に引き上げるには、どのような手立てが考えられますか。

目標達成のハードルは高いが、伸びしろがあるのは太陽光発電だ。メガソーラーの適地が減少する中、荒廃した農地を一部転用したり、農作物を栽培しながら太陽光で発電する営農型を増やしたりできるかが課題だ。32年から固定価格買い取り制度(FIT)を活用したメガソーラーの買い取り期間が順次終了する。それらの設備を更新して発電容量を増やすなど、地道な取り組みも効果が大きい。軽量のペロブスカイト太陽電池を工場屋根などに設置することも考えられる。

洋上風力は資材高の影響で採算が悪化しているが、再生エネの拡大には不可欠だ。欧州では地元住民が洋上風力に出資することで、地元との調整を円滑に進める取り組みがある。建設計画などの情報が入りやすくなるだけでなく、住民の意見も取り入れやすい。同様の手法は地熱発電などにも応用できる。

脱炭素燃料として期待される水素やアンモニアは価格が低下していません。

政府が計画する値差支援の予算は3兆円規模で、それによって導入できる水素は50万トン程度と、30年時点の導入目標300万トンに比べてわずかだ。欧州や米国と比べても予算が少なく、民間企業の投資が進みにくい。ガス会社などが注力する合成メタンを使えば火力発電所の改修費用を抑えられるため、選択肢の1つとして検討すべきだ。

原発由来の電力で水素をつくる発想も必要だ。東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所は地元の同意が再稼働のハードルになっている。水素を地元に販売すれば地域に貢献できるのではないか。地元へのメリットを分かりやすくすることが原発の活用には欠かせない。

きっかわ・たけお 東大博士(経済学)。東大や一橋大などの教授を経て20年国際大教授、副学長を経て23年から現職。政府のエネルギー関連の審議会の委員も歴任。専門は日本経営史、エネルギー産業論

聞き手から)AIで電力需要増、火力に頼らない策を

今回のエネルギー基本計画の策定では、電力需要がどの程度増える前提を置くかが1つの焦点だった。クラウドの普及で米IT大手を中心にデータセンター(DC)の新規開発が進むことに加え、膨大な計算量が必要になる生成AI(人工知能)の登場で1棟当たりの消費電力が急増している。原案では40年度までに最終エネルギー消費量は約1割減るが、電力需要は1〜2割増えると推計した。

DCは電力消費全体に占める割合は小さいが、局所的に地域の消費電力を急増させる。欧米では急増する電力需要に再生エネだけでは対応できず、ガス火力を新設する動きがあり、脱炭素から逆行する懸念が強まっている。

日本の電源構成に占める火力の比率は7割と先進国の中でも高く、これ以上の増加は許されない。再生エネや原発などの脱炭素電源を確実に増やすため、官民が連携して必要な支援を協議する必要がある。

(泉洸希)

 
 
 

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