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エネ基本計画、複数シナリオ必要に 竹内氏の24年展望

NIKKEI GX 2024年1月17日

「Think!」エキスパートに聞く

2024年は次期エネルギー基本計画の策定が始まる。安定供給を確保しつつ、世界的課題として重みを増す脱炭素の加速にどう対応するか。火力発電を中心とする日本にとってはジレンマともいえる構図がこれまでになく鮮明になると、国際環境経済研究所理事の竹内純子氏は分析する。計画は複数のシナリオ形式で示し、策定後の状況次第で柔軟に対応する余地を残すべきだと指摘した。

NIKKEI GXでは読者や記者の質問に対し、日経電子版の「Think!」のエキスパートに答えてもらう企画を実施しています。今回取り上げるテーマはエネルギー基本計画です。

新たなエネルギー基本計画をつくる際にどのような議論が必要でしょうか。

次の計画は30年や50年の温暖化ガス(GHG)削減目標に加え、今後の国別温暖化ガス削減目標(NDC)の議論との整合性も求められる。

一方で電力需要は拡大し、安定供給の難易度は上がる。電化が需要を押し上げるのに加え、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進むことなどで世界の通信量は50年に16年比で4000倍まで増えると予測されている。シンガポールでは電力供給の制約で2019年から約3年、データセンターの新設を禁止する事態になった。

エネルギー基本計画はこれまでのような単一の計画ではなく、複数のシナリオを併記するのが良い。化石燃料や再生可能エネルギーのコスト動向、原子力発電所の再稼働ペースといった幾つかの変数を加味して作り分けるものだ。策定した計画はPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回しながら運用していくべきだ。そうしないと、非現実的なシナリオが唯一の共通ビジョンとなりかねない。

火力発電や化石燃料の位置づけは。

第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)の成果文書でも「移行燃料」の重要性が言及された。50年段階でも再生エネの出力変動を補う電源として火力発電は3割程度は必要になる。燃料に水素を使ったり、二酸化炭素(CO2)を回収・貯留するCCSを組み合わせたりしてネットゼロにする方法もある。電源の新設・維持に投資できる環境が求められる。

23年の水素基本戦略改定で水素には手厚い支援が打ち出された。制度面の設計は整いつつある。今後は民間側が技術開発や企業努力を通じてコストを引き下げられるかが焦点になるだろう。

再生エネも増やす必要があります。

再生可能エネルギーは固定価格買い取り制度(FIT)などで大規模な開発を促す局面から、今ある設備を維持しつつ、導入できる場所を増やしていく局面に入る。人手不足や維持管理にまで目配せした制度設計が求められる。

初期に導入された太陽光発電設備は電力変換装置(パワーコンディショナー)などが寿命を迎え始める。保全へ再投資を促さないと、廃止される発電所が増える恐れもある。事業者へエネルギー供給に関わる責任を果たすよう求めないといけない。

太陽光の新設は住宅への施工を担う工務店が人手不足に直面している。国と業界が連携しながら設計・施工の一元化やデジタル化を進める必要がある。法人の自家消費も伸び悩む。中小企業へ導入を促すインセンティブを拡充していくべきだ。

原子力の活用はどう考えますか。

岸田政権が23年の「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」で原子力を活用した安定供給や脱炭素実現は「国の責務」と明記した。利用の意思を示す大きな一歩だ。

ただ原子力政策大綱が12年に廃止されたこともあり、供給網や人材育成に取り組む方向性が定まっていない。規制の運用にも不安定な部分が見受けられる。特に原発の長期停止につながった規制プロセスには丁寧な検証を求めたい。

1月の能登半島地震でも、原子力規制委員会が志賀原発(石川県)の変圧器故障の原因究明を求めた。規制に地震の影響や科学の知見を反映するのは重要だが、発電所の安全に深刻な影響を与える設備なのかどうかの見極めも大切だ。日本は米国と違い、規制側の行動原則に効率性の観点がない。

電力政策への注文は。

国は電力会社の動きを管理するのではなく、創意工夫を最大限に引き出す政策運営が求められる。日本は総括原価方式から電力自由化にかじを切った。エネルギーの安定供給などで民間企業へ過度にリスクを負わせるべきではない。

事業者側も国の動きにとらわれず、独自に戦略を提示していくべきだ。業界の関心が国のエネルギー基本戦略に集中する現状には違和感を覚える。民間の力で社会変革へつながる動きを生みだすのが自由化の目的だ。通信や金融、自動車との連携など電力産業の姿を変えていくような挑戦を求めたい。

たけうち・すみこ 1994年東京電力入社。主に環境部門を経験し、2012年に独立。国連の気候変動枠組み条約締約国会議にも毎年参加。環境・エネルギー政策の研究・提言を続ける傍ら、スタートアップと協業した新たな社会インフラとしてのUtility3.0を創出するため、18年にU3イノベーションズ合同会社を創設。東北大学特任教授。政府委員も多数務める。

(聞き手は山本夏樹)

 
 
 

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