top of page
検索

データセンターの系統接続「15年待ち」 人も機器も不足

NIKKEI GX 2025年2月4日

データセンター電力爆食の震度㊥

データセンター(DC)を電力系統に接続する工事が長期化している。1カ所のDCが使う電力量が増え、工事が大がかりになっているのに加え、送電網の整備に必要な人手や機器も不足している。政府は再生可能エネルギーの導入拡大に向け、地域間を結ぶ送電網を増強する方針を掲げる。ただ人手や機器の確保が難航すれば、再生エネ普及の足かせになる可能性がある。

データセンターの急増が電力システムや脱炭素の動きに与える影響を、3回の連載で分析します。次回は5日に掲載します。

【関連記事】

DC大型化、電力需要ケタ違い

「場所によっては電力系統に接続するだけで10〜15年かかる」。日本でDCを展開する大手事業者の電力調達担当者はこう嘆く。DC事業者は土地を取得する前に、大手電力の送配電担当者と電力供給が可能かなどを協議する。実際に電力契約が決まれば送配電線の工事に移るが、工事期間は年々延びてきているという。

理由の1つがDCの大型化だ。日本のDCは2000年ごろまで最大電力容量が数メガ(メガは100万)ワットで「大型」と呼ばれてきた。しかし近年建設される「ハイパースケール」のDCはケタ違いだ。1棟あたりの消費電力は25〜50メガワットにのぼり、生成AI(人工知能)向けでは数百メガワットに達するものもある。

電力は送電時のロスを少なくするため、発電所で電圧を高めて送電し、変電所で段階的に電圧を落として需要家に供給する。1カ所に大量の電力を供給するには需要家に電力を届ける「ラストワンマイル」の配電線だけでなく、高圧の送電線の増強も必要で、インフラの整備が大きな課題となっている。

工事を同時並行、2年に短縮

需要の増加を見越し、大手電力も急ピッチで対策を進める。DCの建設計画が相次ぐ千葉県印西市では東京電力パワーグリッド(PG)が19年から大型変電所や全長10キロメートルの地下送電線の工事を進めてきた。24年6月には同社として24年ぶりとなる印西変電所が運転を始め、周辺に供給できる電力は1.5倍に増えた。

東電PGの工事担当者は「同規模のケーブル敷設工事は計画から完成まで4年ほどかかるが、(需要の急増を受けて)2年に短縮することが求められた」と明かす。地下の送電線の工事では、トンネルの掘削と電線の敷設を同時に進め、ケーブルの敷設や接続を担当する作業員や掘削機も増やして対応した。東電管内では印西エリア以外でも5〜6カ所ほどDCの集積地が生まれているといい、送電網の増強工事を急ぐ。

大型変圧器、納期4〜5年に

国際エネルギー機関(IEA)によると、世界全体で送電網と蓄電池への投資は24年に4520億ドル(約70兆円)となり、5年で4割増えた。化石燃料を電気に置き換える「電化」で電力需要が増えているのに加え、再生エネの発電所と電力需要地を結ぶ送電容量が不足しているためだ。

日本でも九州などでつくった再生エネを使いきれず、太陽光発電を一時的に止める出力抑制が発生している。九州や北海道で余った再生エネを首都圏などの需要地に融通できれば出力抑制を減らせる。政府は50年までに地域間を結ぶ送電網の増強で約6兆〜7兆円の投資が必要になると試算する。

英調査会社ウッドマッケンジーによると、変圧器の需要は34年までに現状の3倍に伸びる見通しで、大型の変圧器では納期が4〜5年に延びている。また国内では施工人員も不足し、工期の長期化は当面続くとの見方が多い。

東電PGは施工会社やメーカーに長期の整備計画を伝えるなどして、人員や機器の確保に先手を打つ。また岡本浩副社長は「一部の製品では他社と仕様を合わせたり、共同調達する商品を増やしたりすることも検討している」と話す。

また送電主要9社は送配電の増強や更新にかかる投資の負担が増え、経常利益が20年度からの3年で4分の1未満に減った。経営体力が落ちる中、DC向けの送電投資が経営を圧迫すれば、再生エネ普及の足かせになりかねない。

発電所の近くにDC建設

関西電力送配電はエリアごとの送電線の空き容量や系統接続までの期間を「ウエルカムゾーンマップ」で公表し、送電線の余力のある場所にDCを誘致している。東電PGも15年度から同様のマップを段階的に公表しており、再エネなどが余っている北関東への誘致を進めている。DCの分散が進めば、送電線の投資を最小限に抑えることができる。

米巨大テック企業では発電所の隣接地にDCをつくり、送電線の整備費用や工期を抑える取り組みも目立つ。米アマゾン・ドット・コムは24年にペンシルベニア州のDCを購入して近くの原発から電力供給を受ける契約を締結した。さらにDCが集積するバージニア州の既存原発の付近で次世代の原子力発電「小型モジュール炉(SMR)」を開発する検討を進める。

日本でも洋上風力の適地が多い日本海側や既存の原発付近でDCの新設を検討する事業者が出ている。エネルギー経済社会研究所の松尾豪代表は「日本では原子力発電所の周辺にはDCの適地が少ないが、都市部に近い湾岸の火力発電所などでは広がる可能性がある」と指摘する。JERAなどは新設火力の周辺にDCを誘致する検討を進めており、電力会社側でも同様の動きが広まりそうだ。

(泉洸希)


 
 
 

コメント


NEWS

bottom of page