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世界でデータセンター建設制限 電力網への負荷深刻

日経新聞 2024年2月14日

データセンターの膨大なエネルギー使用量が国の気候目標と電力網に過度な負担をかけているとの懸念から、世界中でデータセンター建設に対する政府の監視が強まっている。

アイルランド、ドイツ、シンガポール、中国のほか、米国のある郡(地方自治体)とオランダの首都アムステルダムが近年、より厳しい環境要件を満たすためにデータセンター新設に関する規制を導入した。

新規プロジェクトに対する脅威が最も大きいのはアイルランドだ。同国は税率が低く、世界のインターネット通信データが流れる大容量海底ケーブルを利用しやすいため、米グーグルや米マイクロソフトといったクラウドコンピューティング企業が建設するデータセンターの一大集積地になっている。

AIでデータ作業量増加

英金融大手バークレイズのサステナブル・テーマ別調査部門の代表で、データセンターに関する報告書の主執筆者であるヒラル・パテル氏は、アイルランドのエネルギー・水規制当局が2021年に電力網への新規データ接続を制限したことが今、「現場レベルで重大な影響」をもたらしていると話す。

データセンター運営大手の米バンテージ・データセンターズと米エッジコネックス、米エクイニクスは昨年、アイルランドの首都ダブリンでの新規プロジェクトの許可申請を地元当局によって却下された。国際エネルギー機関(IEA)は先月、アイルランドのデータセンターは26年に同国の電力需要の32%を占めるようになると予想した。

データセンターは何百万人分ものデータのオンラインストレージを構築するサーバー群が収容されている巨大施設で、環境に与える影響が世界中で深刻さを増している。

米バージニア州ラウドン郡とドイツは最近、住宅地のデータセンター許認可を制限したり、再生可能エネルギーを電力網に提供して廃熱を再利用することをデータセンターに義務付けたりする措置を含む規制を導入した。

バークレイズのアナリストらは、各国政府がインターネットの利用増加が自国の電力網に与える影響をまだ考慮しておらず、今後数年で同じような「厳しさと頻度」の規制が他の地域でも見込まれると警鐘を鳴らした。

これはデータセンターとクラウド企業の2200億ドル(約33兆円)規模のビジネスを圧迫する可能性がある。調査会社インダストリーARCによると、世界のデータ需要の急増に伴い、市場規模は20年代末までに4180億ドルに拡大すると見られている。一方、市場調査会社デローロは、データセンターに対する世界の設備投資額が27年に5000億ドルを超えると推計している。

IEAによると、データセンターのエネルギー使用量は、世界8000カ所にあるデータセンターの3分の1を擁する米国と同10分の1を擁する中国で急増している。バークレイズのパテル氏は「こうした人工知能(AI)によるデータ作業量を処理できない電力網が世界中にたくさんある」とし「環境に優しくなることは、言うは易く行うは難しだ」と話す。

さらに、将来は再生可能エネルギーの生産を増やし、エネルギー効率対策に取り組むことなどで「データセンター運営会社とテック企業が電力網に対してより積極的な役割を担わなければならない」(パテル氏)という。

原子力や廃油の活用も

マイクロソフト、グーグル、米アマゾン・ドット・コムなど、世界最大級のデータセンター施設を運営している「ハイパースケーラー」と呼ばれる巨大クラウド事業者は、サステナビリティー目標を達成するために風力と太陽エネルギーに投資してきた。

各社は他のエネルギー源にも注目している。マイクロソフトは昨年、風力発電や太陽光発電を利用できない場合、バージニア州内にあるデータセンター1カ所のエネルギー需要を最大35%を賄うため、原子力発電による電力を購入すると発表した。同社は未上場の米新興企業ヘリオン・エナジーと電力購入契約を結ぶことにより、太陽でエネルギーが作られるのと同じ反応を利用した核融合発電に対し、将来にわたる賭けに打って出た。

データセンターのバックアップ用発電機の燃料として通常使われるディーゼル燃料を他の燃料に置き換えることがもう一つの課題だ。アマゾンはアイルランドとスウェーデンの拠点を皮切りに、欧州内のすべてのデータセンターのバックアップ電源の燃料を廃油から作られたバイオ燃料に切り替える計画だ。

IEAは先月、データセンターと暗号資産(仮想通貨)、AIによる世界の電力消費量が22年から26年にかけて倍増する可能性があるとの見通しも示した。米モルガン・スタンレーのアナリストらは22年の数字に基づき、27年には世界のデータセンターの電力需要の4分の3以上を生成AIが牽引(けんいん)すると予想している。

データセンター運営会社は、電力の供給をグリーン化しているだけでなく、エネルギー需要を抑制していることを規制当局に示す必要に迫られている。世界的なデータセンター運営会社であるエクイニクスのサステナビリティー責任者、クリストファー・ウェリス氏は、同社がエネルギー使用の管理について世界中の政府と積極的に連携していると話す。「膨大な量の拡大と成長があるところでは、どこであっても一定の注目を集めるものだ」

グーグルはオレゴン州やネブラスカ州、米南東部での熱波や寒波の最中など、データセンターが依存している電力網が容量制限に直面した時に、自社データセンターのエネルギー使用を減らす方法を開拓してきた。一例は翻訳ツール「グーグル・トランスレート」の語彙の更新のような緊急性のないコンピューティング作業を延期したり、他の場所のデータセンターに移管したりすることだ。

英国の首都ロンドンでは22年、光ファイバーケーブル設備に近い場所でのデータセンターの増加が家庭向け電力供給に負荷をかけている兆しが確認された。これを受け、首都全域でエネルギー計画対応を調整するデータセンタータスクフォースが立ち上がった。

ロンドン市長のもとで市のチーフ・デジタル・オフィサーを務めるセオ・ブラックウェル氏は、データセンターを誘致し続けることは、ロンドンが「世界的なテック拠点として存続・拡大し、新たな技術とAIを導入していく」ために極めて重要だと指摘する。

それにもかかわらず「計画担当者はこれ(データセンター)が地域や電力消費といった外部の課題にどうフィットするかという都市計画の問題について懸念を抱いている」と語った。

By Kenza Bryan

英文記事はこちら(2024年2月12日付)

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